男性不妊を語る 葛藤、戸惑い「もっと早く検査を」2022年12月18日


(読売新聞 2022年12月14日の記事より引用)

●自分責めた妊活 伝えたい

4月に不妊治療の保険適用が拡大し、不妊に悩むカップルが受診しやすくなった。
不妊の原因は男女それぞれに認められるが、「女性の問題」という社会通念は根強く、不妊と向き合った男性が抱える葛藤や戸惑いはあまり注目されてこなかった。社会の関心を高めようと、体験を発信する動きが出てきている。

「男性も早めに検査を受けて、精子の状態を調べてほしい」

NPO法人「Fine(ファイン)」(東京)が10月下旬、不妊治療を検討する人らを対象にオンラインで開いた交流会で、公務員の河合克俊さん(43)が語りかけた。

不妊治療で長男が生まれた翌年の2017年に入会し、自らの体験をボランティアで語り続けている。
自分がした後悔を、他の男性にはしてほしくないからだ。

13年の結婚直後、3歳上の妻は高齢出産になると考え、産婦人科で検査を受けた。
問題は見つからなかったが、その後も2年近く、妊娠の兆候はなし。
「一度、精液検査をしてみては?」。
医師の勧めに「念のために」と軽い気持ちで受けた。

結果にショックを受けた。
「精子が著しく少なくて、動きも悪い。自然妊娠は難しいと。男として欠陥があるように感じ、ひどく傷ついた」

不妊症や不妊治療が男性にも関わることとは思ってもいなかった。
急いで友人の医師に相談し、初めて専門科が泌尿器科と知った。
妻と不妊治療専門クリニックを受診すると、採取した精子を顕微鏡で見ながら卵子に注入して子宮に戻す「顕微授精」しか方法がないと言われた。
成功率は低く、保険もきかない。
でも、「治療法がわかって、とにかくホッとした」。


治療が始まると、今度は無力感が募った。
体調を整えて精子を提出すればいい自分に比べ、妻は毎日のように卵巣を刺激する注射を打ち、採卵などの処置で繰り返し通院する。
妊娠できないのは自分のせいなのに、痛みに耐える妻に付き添うしかできない。

「女性の体は年齢を重ねると妊娠の可能性が狭まることを深刻に考えていなかった。もっと早く検査していればと自分を責めた」

自然に任せてふいにした時間、男としての価値を否定されたような衝撃、妻への負い目――。
交流会では当時の感情をありのままに語る。
参加した男性からは「苦しいのは自分だけじゃないと知って心強く感じた」と感謝された。
ある女性は「思いを語らない夫も、実はそんな風に感じているのかもしれないとわかって良かった」と伝えてくれた。

以前の自分のような認識にとどまる男性は多いと感じている。
「男性は不安があっても人に言いにくく、受診への抵抗感も強い。体験を語ることで少しでも力になれたら」


●心理面への配慮が必要

男性不妊の原因は精子の数や動きが少なかったり、精子の通り道が詰まっていたりするほか、勃起障害(ED)や射精に関する問題などがある。

生殖医療技術の進歩により、精液中に精子がない無精子症でも、精巣から直接精子を採取する手術などを通じて妊娠できる可能性が生まれている。

著書に「日本の男性不妊」がある奈良女子大非常勤講師(社会学)の竹家一美さんは「男性不妊は精子自体の問題と、性交渉ができないなど明かしづらい性的能力の問題が混同され、タブー視されてきたが、技術の発達で開示しやすくなった」と指摘する。

その上で、「精子を提供するだけの存在として扱われる心理的な苦痛や、精巣切開など手術への不安に対する配慮も必要だ。理解が広がらない限り、不妊は女性だけの問題という固定化した見方も変わらない」と訴える。


●不妊治療

妊娠しやすい時期の性交渉を指導するタイミング法、精液を子宮に注入する人工授精、高度な技術が必要な体外受精・顕微授精などがある。
以前は一部の検査などを除けば原則自費で、国が昨年公表した実態調査によると、体外受精の1回の平均費用は約50万円。
治療費の総額が100万円以上の当事者は全体の23.8%を占めた。
今春から人工授精や体外受精などの基本的な治療が保険適用され、経済的負担の軽減が期待されている。




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